言う相手が間違ってても。言える場所があるって大事なことだよ。

彼女は言った。「男が怖い」と。
次に「いなくなっちゃえばいいのに」と続けた。
そして最後に「ひどいこと言ってごめんなさい」と、俺に謝った。

言う相手が間違っていることも、そんな男ばかりでないこともわかっていると、彼女は言った。
でも、どうしても考えてしまうとも、彼女は言った。
男を利用した理不尽な女の攻撃を受け、どうしようもできない子供という立場を悪用された彼女は、そんな日々を『耐える』しかなく、自分が悪いと責め続けていた。

「いいじゃないか、言う相手が間違ってても。言える場所があるっていうのは大事なことなんだぞ」

そう言うと、彼女は呆けた顔をして俺を見つめた。何を言っているのか理解できないようだった。

「人に頼るっていうのは、何か頼み事をしたり、力を借りたりすることだけじゃない。こうして気持ちを吐き出すこともそうだ。お前はもっと人を頼れ。少なくとも俺は、お前に頼られたいと思ってる」

「い、いいの?」そんなことをしても、と救いを見つけた瞳で問いかけてきた。
「いいよ」はっきりと答えた。

「だって、嫌じゃない?迷惑じゃないの?」
「嫌でも迷惑でもない。じゃあお前は、俺が頼ったらそう思うのか?」

ひどく驚いた顔をして、彼女は無言のまま首を2,3度横に振った。

「思わない。反対に嬉しい」
「なら、俺と同じだ」

泣きそうになっている顔を見て、思わず頬を緩ませた。
それを合図とするように、彼女は顔を歪ませ、大粒の涙を零す。

「う……うえええええーん!何でそんなに優しいのー……う、ぼえええええええー」

彼女は、変な擬音を発しながら子供のように泣きじゃくった。
途中、「ありがとう」や「ごめん」と言い、あとはよくわからない単語も口にしていた。

──恋愛ファンタジー小説『字守-アザナカミ-』より一部抜粋|備忘録|予告

***

私が小説を書く時、最初にラストを決めます。

そこから肉付けをしていきますが、ポイントとなるシーンもラストから逆算していく時に書き出します。

今回は、その数あるポイントの中の一つ。

道のり長いなぁ。あはは

橘右近をシェアで応援!!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です