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04.それは呪文のように感覚を麻痺させる|晟

 驚いた。確か、初めて会うはずなのに。名前が彼女の口から出てきたことに、やはりこのイベント自体が自分のために開かれたものだと思い、心の中でため息をついた。

「そうだよ。どこかで会った?」
「あ! そっか、ごめん。えーとね、どこから話す?」

 先程からちょっとずれた回答をしてくるなと吹き出した。依頼で来ていることはわかっているので、お互いの状況を確認しようととりあえずこの場から離れることにする。

 連絡のとれなくなった智孝がいるかもしれないということで、共に控室へと向かう。
 晟は差出人不明の招待状が送られてきたことと、まだ現状では特定できないことを伝え、非常ベルの後に連絡がとれなくなったことと、あの音声についてを聞いた。

「で、その音声の後に犠牲者を少なくするためのヒントがあったんだけど、それが『樫倉晟に会え』だったの。でも」

 ちらりと晟を見つめ、言葉を続ける。

「私たちは、樫倉くん? 晟くん? を知らなかったし、あの状況だったからどうしようかと思ってた」
「晟でいいよ」
「じゃあお言葉に甘えて。だから晟が来てくれて助かったよ。ありがとう」
「いやそれは……俺もあの踊り見て、字守が関わってるってわかったから。えーと」
「有羽、私達も名前言わなきゃじゃない?」

 名前をまだ聞いてなかったと顔に出ていたのか、里紗がフォローをする。
 軽く自己紹介をし、お互いの年も近いことから名前で呼び合うことにした。その後、音声と招待状の意図するところは何かを考える。
 字守にそんなことを告げて自分を探させたとしても、自分自身がヒントを把握していないのならこのように行き詰ってしまうはずだ。
 依頼人の名前にも心当たりはなく、イベントホールともゆかりはなかった。招待状を難しい顔をしながら見つめる有羽も、ぶつぶつと脳内会話を口に出していた。

「うーん、音楽については私も詳しくないからなぁ。あやちゃんやミーちゃんがこれに関わってるとしたら、前もって教えてくれるだろうし」
「彩ちゃんとミーちゃん?」
「6番目の演奏で、ピアノとバイオリン弾いてた人達だよ。あの二人も字守で──って、晟」

 笑みを浮かべていた顔が一瞬にしてこわばり、自分の腕を引く有羽の視線の先を辿ると、赤いドレスを身につけた女性が廊下に倒れていた
 急いで駆け寄り、声をかける。
 すると、女性とは思えないような力で晟の腕をつかみ、乱れる呼吸の中言葉を紡いだ。

「あの人に……会わなきゃ」

 それだけを告げると、女性は全体重を預け、そのまま目を閉じた。
 ズンと腕にのしかかる重さに、一年前の記憶が蘇る。

「お前は結局、明日香を助けることはできない。一人の女すら、守る力もない」

 それは呪文のように感覚を麻痺させる。頭の奥で小さなむしがうごめいているようだった。払おうとしても払えないその蟲に、晟は顔を歪める。

 明日香を殺した男が放った、最後の言葉だった。

 

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一ツ屋有美子@声優小説家
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