キーンコーンカーンコーン……
4時間目の授業が終わり、生徒達は各々行動を開始する。私は今の授業のノートをとるのに時間がかかり、未だ机に向かったままだが、後ろの席にいる野中泉(のなか いずみ)さんは例外ではなく、友達二人と話をしながら昼食を机の上に並べていた。

「えー! 泉ってばまたふっちゃったのー?新井(あらい)ってE組のマジメ君でしょ? いい奴じゃん」

友人の一人がそんなことを口走りながらパンの袋を開ける……音がした。
手は黒板に書かれている文字を写すために懸命に動いているが、耳は聞こえてくる会話に釘付けとなった。
野中さんは答える。

「いい人ね……私にとってはどうでもいい人だわ」

なかなかキツイ性格だ。

「でも泉ってさ、何で彼氏とか作らないの?新井もお試しに付き合ってみればいいのに」

先程の発言者は本当に不思議そうに尋ねた。新たな声がそれに対し呆れた口調で言葉を発する。

「あんたってお試しで人と付き合ってるの?」
「そうよ。初めからこの人が運命の人なんだわって思ったら、なんか重くない?」
「はーい! あたしは人それぞれだと思うな。泉はそういうタイプじゃないんでしょ」
「私は……運命にはあまり興味ないわ。ただ、告白は好きな人から言ってもらいたいだけよ」
「おおー! ということは好きな人がいるんですねー?」
「ふふ、内緒」

安っぽいレポーターがインタビューするように、友達は野中さんから好きな人の情報を得ようとしていた。野中さんはうまくはぐらかしてその質問に付き合う。
私は写さなければいけない量にも、後ろの会話にも、いささか嫌悪感を抱き頬杖をついて一つため息をもらした。

「でも告白されて嬉しいとは思うよね?」
「そうね……あんまり思わないかな」
「え!? 私なら嬉しいけどなー」

野中さんは一呼吸置いて口を開く。

「私はダメなの。どうでもいい人から告白されても意味ないし、ましてや付き合うなんて時間と労力の無駄だわ」
「意味ないだってー。新井もかわいそー」

友達は言葉とは裏腹に楽しそうに笑いながらそう言った。
名前と顔が一致しない新井君とやらもかわいそうな人だ。勇気を出したであろう告白も、昼時の談笑ネタにされてしまい、私にさえも同情されてしまうのだから。

授業終了から5分以上経過していたため、私は集中してノートを書くことにした。いくら聞こえてしまうこととはいえ、やはり盗み聞きはよくない。
でも……頭の片隅では今の会話のことを考えてしまっていた。野中さんのあの発言。きついけど、はっきりとした意見を持っているのは確かだ。

もし、彼女の言う『どうでもいい人からの告白』が『意味のないこと』だとしたら、『好きな人がいる人を好きになる』ことはどうだというのだろう? 好きになってもらうための努力は必要?

私は知っている。
野中さんの好きな人には彼女がいること──

綺麗な矛盾だと思った。

 







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    「生きる」と「愛」をテーマにし、言葉で世界を変える小説家。 役者経験を活かし、自分を見つめることで人生を豊かにさせる方法を伝えるマインドコーディネイター。webデザインで色んな人のビジネスに関わり、自分の世界観を広げ、子供たちが楽しくビジネスを学ぶ学校を作るのが夢。 【得意】 演技・人間観察・雰囲気読む・感覚を落とし込む・小説書く・サプライズ考える・男性を理解し応援する・難しいことをわかりやすく説明する