お花見談義ー里美sideー

毎年、お隣さん同士で楽しんでいたお花見。

年月が経つにつれて、それは恒例行事ではなくなる。ならせめて今年はパーッと盛り上がろうということで仲のいい友達も連れて賑やかに時を過ごしていた。

大きなブルーシートと、そこに広がるたくさんのお弁当。

昨日の夜に有羽(ゆば)の家に集まって、女性メンバーで楽しく作り上げた。中でも一番頑張っていた有羽が嬉しそうに容器を取り出し、皆に見せる。

玖堂有羽
はい、今日のデザートは諫美(いさみ)くんのリクエスト、イチゴでーす

買い出しでイチゴを手に喜んでいた理由がわかった。このサプライズを我が弟にしたかったんだ。

それなのに。

諫美
?俺、リクエストなんてしたっけ?

などと、有羽の気持ちをこれっぽっちも考えずに諫美は言った。

玖堂有羽
えー?覚えてないの?・・・あ、そうか。じゃあアレはリクエストじゃなかったんだ

けれど、有羽はさほど気になる様子を見せずにいた。

諫美
え?何?全然話が見えないんだけど
玖堂有羽
昨日の放課後、諫美くん、ちょっと寝てたじゃない?あの時、寝言で言ってたんだよ。『先輩・・・ナントカカントカ・・・やっぱイチゴでしょ』って
諫美
それでデザートって

諫美は有羽らしいと吹き出す。

玖堂有羽
もしかして違った?
諫美
もしかしなくても違う

有羽をからかうのが大好きな諫美は、そう言って少しだけ拗ねた表情を有羽にさせた。

諫美
多分ね。覚えてないけど

それを聞いて笑う有羽を見て、我が弟ながらドSな性格をしているなとため息をついた。

そんなんじゃ、その内有羽に呆れられるからね。

里美
ってか、覚えてないって。有羽、昨日楽しそうにしてたのに
伊藤智孝
まあ、夢なんてそんなもんだろ
里美
そーなんだけどさ。・・・・・・はあ、お兄ちゃんと諫美が足して2で割ったようになればいいのに
伊藤智孝
どういう意味だ?

お兄ちゃんはいかなすぎだし、諫美はいきすぎなんだってば。

ずっと何年も見てきている身としてはじれったくてたまらない。だけど、それを私が言ってはいけないと思っているから、こうしてまたやきもきしなければならないのだ。

 

しかし、そんな会話を交わしていると、その「イチゴ」が何なのか気になっていた遼(りょう)の言葉に、その場の全員が固まった。

遠藤遼太朗
うーん・・・いっちゃんがイチゴって言ったら・・・パンツ?

・・・・・・。

え?どうして私の周りにはお子ちゃましかいないわけ?

里美
遼、あんた芸がないわねー。それとも自分の好みなわけ?

私が冷やかにつっこむと、遼は慌てて否定した。

諫美
そうそう。だってリョータロの好みは有羽のだもんな
玖堂有羽
えっ!?
諫美
有羽んち遊びに行った時、見てんじゃん

驚いて遼と諫美の顔を見比べている有羽に、何とも表現のしがたい顔をしているお兄ちゃんを見て、私は再びため息をつく。

遠藤遼太朗
ちょっ、いっちゃん!シャレになんねーって!!いや、見てない!見てないから!

ここは助け船を出してあげようかな。

里美
洗濯物で見えちゃうこともあるしねー。

っていうか、遼の回答は当てにならないからスルーで

玖堂有羽
里美、それフォローになってないw

今度おごってもらおう。

そんなことを思っていると、今までは黙って聞いていた晟(せい)がこんなことを提案する。

樫倉晟
俺は、諫美の寝言から考えるのがいいと思う。つまりさ、諫美が「先輩」と呼ぶ人物から考えた方がいいんじゃない?
神谷聖
いいね。僕もそう思う
伊藤智孝
なるほど。その先輩がここにいれば、諫美からでなくても答えはわかるってことか
樫倉晟
そそ

へー。やっぱり晟って要領いいわよね。

里美
ってことは、晟か神谷くん?あ、彩ちゃんもそうか
海白彩
それなら、今名前の挙がった人たちが、諫美くんとイチゴに関することで思い出せる話をしてみるっていうのはどう?
玖堂有羽
いいね!ってことで、晟いってみよー!

晟は自分がその人に該当すると予想していたのか、軽く考える素振りを見せた後に「違う可能性が高いけど、一つ思い出した」と話し始めた。

樫倉晟
おととい、有羽と一緒に帰ろうとした時、遼太朗と諫美に会ったんだよ。ちょうど部活が終わった時で、二人ともバテててさ。有羽がキャラメルあげたんだ。疲れた時にいいって
遠藤遼太朗
ああ!確かきなこキャラメルもらったんだよな?

有羽なら持ってそう。

諫美
そうそう。きなことあずき、どっちがいいって聞かれて。有羽って何でそんなレアなもん持ってるの?
玖堂有羽
え?そんなレアじゃないよ
諫美
ジンギスカンもあったじゃん
伊藤智孝
ああ、あったな。あれは・・・食べ物じゃない
里美
あれ、ホントにマズイよねw

当時を思い出したのか、お兄ちゃんは苦笑いを浮かべていた。

マズイんだけど、盛り上がったのは確かだった。

玖堂有羽
でも実は今も持ってるんだよね
諫美
ホントにいらないから。もっと普通なのないの?

と、その言葉に有羽がはっとした様子で諫美を見つめる。

 

諫美が言った『普通のキャラメル』

あの時もこんな会話が繰り広げられていたはずだ。

「普通の、イチゴとかメロンとか、そういうフルーツ系のやつ」と。

玖堂有羽
え?もしかしてキャラメルのこと?
樫倉晟
んー、でもそうするとさ、有羽がその『先輩』になっちゃうから違うと思うんだよな

あ、そっか。なーんだ。

里美
じゃあ、キャラメルじゃないってことね。神谷くんは?何かある?
神谷聖
僕は・・・・・・イチゴ味で思い出したことなら。何日か前、気温25℃を超えた時があっただろ?その時同じ教室にいた諫美が遼太朗と言ってたんだよ。カキ氷が食べたいって
里美
それは私も覚えてる。お昼休みだったよね?学年の違う諫美がなぜか一緒にお昼を食べるっていう謎現象

いつもはいる有羽がいなかったんだよね。

有羽の代わりにといつもの仕返しをしたつもりだったが、諫美は呆れた表情を浮かべて

諫美
・・・・・・うーわ。今何で姉ちゃんに彼氏ができないのか、わかった

などと、暴言を吐いた。

里美
はい?
諫美
ひくわー
里美
え、何?私今ケンカ売られてる?ちょっと、お兄ちゃんまで何笑ってんの?

意味わかんないだけど。

遠藤遼太朗
そういえば、言ってた言ってた。俺はメロン、里美はレモンがいいって言ったよ
・・・・・・あれ?でもさ、これでいくと、さっきの晟と同じになる?神谷と話してたわけじゃないし
神谷聖
そうだよ。イチゴ味で思い出したって言ったじゃないか。答えになりそうだとは思ってなかったけど、きっかけになるかもしれないと思ってさ

神谷くんは淡々とした様子で答えた。

海白翔太
あ、でも、それいいかもしれませんね。イチゴ味と言っても色々あるでしょうし。一度食べ物から離れてみるのはどうです?
海白彩
食べ物から離れる?
海白翔太
あることに対するイメージとか。それなら食べ物じゃないですよね?

面白い。さすが翔太くん、彩ちゃんの弟だ。

里美
その発想いいね!イチゴのイメージと言ったら・・・・・・やっぱり女の子よねー

私はすぐに思い浮かんだイメージを口にした。

里美
ね?お兄ちゃん。有羽なんてぴったりじゃない?
伊藤智孝
まあ・・・そうだな。でもそれだと先輩にならないし

マジメか。そこで有羽にアピールしなさいよ!!

玖堂有羽
もし、彩ちゃんがイチゴのイメージって意味で言ったとしたら、一番正解っぽいね

こっちもマジメか!

海白彩
私は有羽の方がイチゴのイメージあるけど
玖堂有羽
え?ホントに?ありがとー!私は自分は「びわ」かなーって思ってた
樫倉晟
何でびわ?w
玖堂有羽
なんとなく?びわ好きだし

っていうか、そこでびわなんて言っちゃう有羽をおとすのって相当な気がしてきた。

ああ、だからお兄ちゃんも諫美も『相当』なのか。

海白彩
それじゃあ、私はサクランボね
里美
彩ちゃんまでノッてきたw

えー、でもイチゴの方がかわいくない?私はイチゴがいいなぁ。イチゴって甘酸っぱいから、恋のイメージだし

諫美
一番姉ちゃんに合わないw

こいつ・・・!

せっかく人が『恋』というキーワードと、イチゴに例えるとかわいいってことを教えてあげたのに!!

しかも、またお兄ちゃん笑ってるし!なんなの!?

海白彩

そこへ、彩ちゃんが何かを思い出したように声を発した。どうしたの?と有羽が聞くと、少しためらいながら後を続ける。

海白彩
うん、ちょっと思い出したことなんだけど・・・翔太が諫美くんと話したことだからあまり関係ないかもしれないわ
神谷聖
何ですか?聞いてみたいです
海白彩
えっと、じゃあ・・・キスの味はレモンっていうよりイチゴの方が合うって話をしたらしいの

それに対して諫美はひどく顔をひきつらせた。

まさか彩ちゃんからそんな話をふられるとは思ってもみなかったんだろう。いい気味。

そんな諫美とは反対に、翔太くんは嬉々として話す。

海白翔太
あ!あったあった!ありましたよ!いっちゃん、随分と自信満々に言うから経験があるのかと思って
諫美
それについてはノーコメント。どっちにしろ、からかわれるしね

いや、ないでしょ。

単に翔太くんをからかっただけでしょ?

・・・・・・えー、ないないない。

里美
ないよね?お兄ちゃん
諫美
いきなり何だよ?
里美
諫美、経験ないよね?
伊藤智孝
俺が知るわけないだろ
里美
何でよ?一緒の部屋で住んでるのに
伊藤智孝
だからって話さないよ
里美
えー!諫美に先越されたらどうするの?ってか、お兄ちゃんはどうなのよ?
伊藤智孝
どうもこうもない。お前も彼氏できたらわかるんじゃないか?

くっそー!この兄にこの弟ありだわ、やっぱり。

里美
翔太くんはどう?

気分転換に私はそう翔太くんに話題をふった。

海白翔太
え?僕ですか?僕は・・・・・・経験ないのでわかりません
里美
翔太くん、正直すぎるw

ホント、癒される。これくらいお兄ちゃんも諫美も素直ならいいのに。

伊藤智孝
いや、お前の聞き方だろ。経験があるかないかじゃなくて、イメージとしてどうか?って聞いたんだよ
海白翔太
あ、そうだったんですね

お兄ちゃん、何で他人のことだとフォローできるの?

翔太くんは律儀にもイメージについて「あーだこーだ」と考えを巡らせ、呟くように誰ともなく問いかける。

海白翔太
あのー、一つ聞きたいんですけど、レモンとイチゴの違いって何ですか?
樫倉晟
出た。翔太お得意のボケ
諫美
ホント。何でそんな言葉が出てくるのか理解不能、意味不明
海白翔太
ちょ、二人ともひどいじゃないですか!

いやごめん。私も思ったわ。

伊藤智孝
二つの違いは、同じ酸っぱいでも甘さを含んでるかどうかだと思うよ
諫美
フォロー入りましたー

お兄ちゃんの言葉に、何か思うことがあったのか有羽が皆に質問する。

玖堂有羽
今思ったんだけど、イチゴって酸っぱいイメージ?それとも甘いイメージ?
樫倉晟
うーん・・・・・・甘い?

ああ、そうか。翔太くんのイチゴのイメージって『酸っぱい』なんだ。

だから『レモン』と『イチゴ』はどう違うの?ってなったんだ。

里美
あれさ、ケーキのイチゴって酸っぱいよね
玖堂有羽
それ!さすが里美!!

私もイチゴ自体は甘いってイメージなんだけど、ケーキのイチゴって酸っぱいよね。だから先に食べちゃうんだけど・・・・・・諫美くんはイチゴのケーキ、どこから食べる?

諫美
やっぱりイチゴでしょ・・・・・・って、あれ?

今の話題の元となった言葉がそのまま出てきたことに、皆がはっとする。中でも、遼が一番声を上げた。

遠藤遼太朗
それだ、いっちゃん!部長の誕生日ん時!マネージャーがショートケーキプレゼントっつって、どこから食う?って話になった!
海白翔太
あー!ありましたね。その時も、いっちゃん同じこと言ってましたよ。で、先輩達から「だから諫美は」って言われて、バスケでのチームワークの話になって
諫美
あー・・・・・・あったな、そういえば
海白彩
まさか、それが答え?
神谷聖
みたいですね。諫美の顔に書いてある

ケーキのイチゴを食べる順番!?何それ!一番おもしろくない!!

里美
ちょっと!一体いつの話よ、それ
諫美
二ヶ月くらい前
里美
はー!?何でそんな前のこと夢に見るのよ!
諫美
知らないよ。見たくて見たわけじゃないし
伊藤智孝
まあ、夢なんてそんなもんだよな
里美
そうだけどさー。昨日の有羽の様子を知ってるから、なんかちょっとね・・・
伊藤智孝
あいつはそんなこと気にしないだろ。楽しそうだし

お兄ちゃんの言う通り、有羽は楽しそうな様子で諫美にイチゴを勧めていた。

玖堂有羽
諫美くんのおかげでイチゴ食べられたし、盛り上がったし、よかったね
里美
有羽!もう私のものになっちゃいなさい!!

どこか自慢気なお兄ちゃんにちょっぴり嫉妬した私は、有羽にそう言いながら抱きついた。

END

 

話し上手・聞き上手・使い分け上手

里美は話し上手タイプです。

自分の経験や考えで、その人に問題解決のきっかけを作る話題を出します

話題の引き出しが豊富で、色んな角度から物事を見て、その人に合う話題を提供することもできます。