お花見談義ー彩sideー

大好きな人達とのお花見。

3月下旬ということもあって、少し肌寒い中、大きいブルーシートを広げ、私たちはお弁当と桜とおしゃべりを楽しんでいた。

玖堂有羽
はい、今日のデザートは諫美(いさみ)くんのリクエスト、イチゴでーす

そんな中、有羽(ゆば)はうきうきとした様子で容器にたくさん詰まったイチゴを皆に見せた。

前日から有羽の家に行き、里美(さとみ)ちゃんを交えながら作ったお弁当。

普段から家の料理を担当している有羽が手際よく作り、私は少しだけサポートするだけだった。

見た目を整えるのが苦手ということで、そこは里美ちゃんが担当。

あれだけ大変な思いをしたのに、有羽は食べてもらう嬉しさにニコニコとしていた。

 

そんな有羽とは対照的に、諫美くんはきょとんとした顔で聞き返す。

諫美
?俺、リクエストなんてしたっけ?

と。

玖堂有羽
えー?覚えてないの?・・・あ、そうか。じゃあアレはリクエストじゃなかったんだ

ぶつぶつと有羽は呟く。

諫美
え?何?全然話が見えないんだけど
玖堂有羽
昨日の放課後、諫美くん、ちょっと寝てたじゃない?あの時、寝言で言ってたんだよ。『先輩・・・ナントカカントカ・・・やっぱイチゴでしょ』って
諫美
それでデザートって
玖堂有羽
もしかして違った?
諫美
もしかしなくても違う

サプライズを楽しんでいた側としては、諫美くんの言葉にショックを受けたであろう。

でも、有羽はさほど気にした・・・というか傷ついた様子はなく、ちょっと拗ねた表情を浮かべていた。

諫美
多分ね。覚えてないけど

からかう諫美くんに笑う有羽。

有羽が落ち込んでいないのならと、私は「イチゴ」について考え始めた。

 

すると、私と同様その「イチゴ」が何なのか気になっていた遠藤くんが、腕組みをしながら唸っていた。

そして出てきた回答に、その場の全員が固まる。

遠藤遼太朗
うーん・・・いっちゃんがイチゴって言ったら・・・パンツ?

遠藤くん、ある意味スゴいわ。

ちらりと隣にいる有羽のクラスメートであり、彼氏の神谷聖(かみや ひじり)くんを盗み見た。

彼も予想外のことだったらしく、驚いた顔をしていた。

里美
遼、あんた芸がないわねー。それとも自分の好みなわけ?

里美ちゃんが冷やかにつっこむと、遠藤くんは慌てて否定した。

 

諫美
そうそう。だってリョータロの好みは有羽のだもんな
玖堂有羽
えっ!?

その諫美くんの発言に、男性陣がざわつく。

諫美
有羽んち遊びに行った時、見てんじゃん

にやにやと笑いを浮かべる諫美くんに、遠藤くんは先程よりも慌てた様子で抗議を始めた。

遠藤遼太朗
ちょっ、いっちゃん!シャレになんねーって!!いや、見てない!見てないから!

後半は有羽に向けて発せられ、有羽は「わかってるよー」と笑顔で答える。諫美くんが単にからかっているだけだと彼女もわかっているのだろう。

里美
洗濯物で見えちゃうこともあるしねー。

っていうか、遼の回答は当てにならないからスルーで

玖堂有羽
里美、それフォローになってないw

すると、今までは黙って聞いていた樫倉晟(かしくら せい)くんがこんなことを提案する。

樫倉晟
俺は、諫美の寝言から考えるのがいいと思う。つまりさ、諫美が「先輩」と呼ぶ人物から考えた方がいいんじゃない?
神谷聖
いいね。僕もそう思う
伊藤智孝
なるほど。その先輩がここにいれば、諫美からでなくても答えはわかるってことか

里美ちゃんの兄である智孝(ともたか)さんの言葉に、私も同様に「なるほど」と頷く。

樫倉晟
そそ
里美
ってことは、晟か神谷くん?あ、彩ちゃんもそうか

私もその先輩に入ったこともあり、イチゴの正体を知りたいという好奇心からこんなことを提案した。

海白彩
それなら、今名前の挙がった人たちが、諫美くんとイチゴに関することで思い出せる話をしてみるっていうのはどう?

すかさず有羽がそれにのる。

玖堂有羽
いいね!ってことで、晟いってみよー!

樫倉くんは自分がその人に該当すると予想していたのか、軽く考える素振りを見せた後に「違う可能性が高いけど、一つ思い出した」と話し始めた。

樫倉晟
おととい、有羽と一緒に帰ろうとした時、遼太朗と諫美に会ったんだよ。ちょうど部活が終わった時で、二人ともバテててさ。有羽がキャラメルあげたんだ。疲れた時にいいって
遠藤遼太朗
ああ!確かきなこキャラメルもらったんだよな?

きなこキャラメル!

諫美
そうそう。きなことあずき、どっちがいいって聞かれて。有羽って何でそんなレアなもん持ってるの?

あずきもあるのね。

玖堂有羽
え?そんなレアじゃないよ
諫美
ジンギスカンもあったじゃん
伊藤智孝
ああ、あったな。あれは・・・食べ物じゃない
里美
あれ、ホントにまずいよねw

私の知らない彼女たちが過ごしてきた『お隣さん』の時間に、智孝さんの妹でもある里美ちゃんも頷いた。

 

玖堂有羽
でも実は今も持ってるんだよね
諫美
ホントにいらないから。もっと普通なのないの?

と、その言葉に有羽がはっとした様子で諫美くんを見つめる。

 

玖堂有羽
え?もしかしてキャラメルのこと?前にも話してたよね?それで普通のイチゴとかメロンとかって
樫倉晟
んー、でもそうするとさ、有羽がその『先輩』になっちゃうから違うと思うんだよな

そうか。だから樫倉くんも「可能性が低いけど」って言ったんだ。

里美
じゃあ、キャラメルじゃないってことね。神谷くんは?何かある?
神谷聖
僕は・・・・・・イチゴ味で思い出したことなら。何日か前、気温20℃を超えた時があっただろ?その時同じ教室にいた諫美が遼太朗と言ってたんだよ。カキ氷が食べたいって

確か、その話は聖くんから聞いたことがある。

聖くんからも「何味が好きですか?」って聞かれて、それで私は「イチゴ」って答えたんだった。

 

でも待って。これで考えていくと・・・・・・私の思考と同じ結果に辿り着いた遠藤くんが代弁する。

 

遠藤遼太朗
そういえば、言ってた言ってた。俺はメロン、里美はレモンがいいって言ったよ。・・・・・・あれ?でもさ、これでいくと、さっきの晟と同じになる?神谷と話してたわけじゃないし
神谷聖
そうだよ。イチゴ味で思い出したって言ったじゃないか。答えになりそうだとは思ってなかったけど、きっかけになるかもしれないと思ってさ

そうだったのか。

聖くんにしては珍しいミス?だなと思った。

海白翔太
あ、それいいかもしれませんね。イチゴ味と言っても色々あるでしょうし。一度食べ物から離れてみるのはどうです?

意外な展開に、思わず頭に浮かんだ言葉をそのまま口にした。

海白彩
食べ物から離れる?
海白翔太
あることに対するイメージとか。それなら食べ物じゃないですよね?
里美
その発想いいね!イチゴのイメージと言ったら・・・・・・やっぱり女の子よねー

ぽんぽんと出てくる色んな発想が面白く、私もそれにのって考える。

イチゴ、女の子、とくればまずここにいる女性陣のイメージが先にあがる。

私のイメージだと有羽がぴったりだった。

イチゴは甘い。私とは違って、彼氏に甘えることもできる有羽はイチゴが合っている。

玖堂有羽
もし、彩ちゃんがイチゴのイメージって意味で言ったとしたら、一番正解っぽいね

お互いにイメージを抱いていたことにくすぐったい笑いがこみ上げた。

海白彩
私は有羽の方がイチゴのイメージあるけど
玖堂有羽
え?ホントに?ありがとー!私は自分は「びわ」かなーって思ってた
樫倉晟
何でびわ?w
玖堂有羽
なんとなく?びわ好きだし

それでもここで『びわ』が出てくることに有羽のユーモアさを垣間見た。

海白彩
それじゃあ、私はサクランボね
里美
彩ちゃんまでノッてきた。

えー、でもイチゴの方がかわいくない?私はイチゴがいいなぁ。イチゴって甘酸っぱいから、恋のイメージだし

諫美
一番姉ちゃんに合わないw

 

諫美くんの言葉に里美ちゃんは何やら反論をしていた。ホント、諫美くんて人をからかうの好きよね。

でも、恋のイメージかぁ。

甘酸っぱいというのも頷ける。

海白彩

『甘酸っぱい』に『恋』で翔太が言っていたことを思い出し、声を発してしまった。

それに気付いた有羽が「どうしたの?」と聞いてくる。

海白彩
うん、ちょっと思い出したことなんだけど・・・翔太が諫美くんと話したことだからあまり関係ないかもしれないわ
神谷聖
何ですか?聞いてみたいです

聖くんが笑みを浮かべて尋ねてきた。

ちょっと、内容が内容だから聖くんの反応が気になるけど・・・。

海白彩
えっと、じゃあ・・・キスの味はレモンっていうよりイチゴの方が合うって話をしたらしいの

それに対して諫美くんはひどく顔をひきつらせ、聖くんは驚いた顔をした。

 

海白翔太
あ!あったあった!ありましたよ!いっちゃん、随分と自信満々に言うから経験があるのかと思って
諫美
それについてはノーコメント。どっちにしろ、からかわれるしね

諫美くんはどうやら人をからかうのは好きだけど、からかわれるのは嫌みたい。

海白彩
・・・聖くんは、どう思う?
神谷聖
先輩からそんな話題をふってくるとは思ってもみませんでした。先輩こそ、どういうイメージがありますか?
海白彩
え・・・と、レモン?

実際は味なんてわからなかったと思うけど、イメージということでそう答えた。

私の答えに、聖くんは相変わらず笑みを浮かべたままだ。もう一度問いかけようとした時、思いもよらぬ発言を耳にする。

神谷聖
僕は覚えていないので、この後にでも試してみますか?

・・・・・・。

やっぱり、この話題は振らない方がよかったのかもしれない。顔を熱くしながらそんなことを思った。

 

里美
翔太くんはどう?
海白翔太
え?僕ですか?僕は・・・・・・経験ないのでわかりません
里美
翔太くん、正直すぎるw
伊藤智孝
いや、お前の聞き方だろ。経験があるかないかじゃなくて、イメージとしてどうか?って聞いたんだよ
海白翔太
あ、そうだったんですね

それに一番笑っていたのは諫美くんだった。

翔太は律儀にもイメージについて「あーだこーだ」と考えを巡らせ、呟くように誰ともなく問いかける。

海白翔太
あのー、一つ聞きたいんですけど、レモンとイチゴの違いって何ですか?
樫倉晟
出た。翔太お得意のボケ
諫美
ホント。何でそんな言葉が出てくるのか理解不能、意味不明
海白翔太
ちょ、二人ともひどいじゃないですか!

二人に同感だった私だけど、弟ということもありフォローしようか迷った。すると

伊藤智孝
二つの違いは、同じ酸っぱいでも甘さを含んでるかどうかだと思うよ

智孝さんが代わりに教えてくれた。

さすが智孝さん。いつも弟がお世話になってます。

玖堂有羽
今思ったんだけど、イチゴって酸っぱいイメージ?それとも甘いイメージ?
樫倉晟
うーん・・・・・・甘い?

樫倉くんの答えに私も頷く。

里美
あれさ、ケーキのイチゴって酸っぱいよね
玖堂有羽
それ!さすが里美!!

私もイチゴ自体は甘いってイメージなんだけど、ケーキのイチゴって酸っぱいよね。だから先に食べちゃうんだけど・・・・・・諫美くんはイチゴのケーキ、どこから食べる?

諫美
やっぱりイチゴでしょ・・・・・・って、あれ?

今の話題の元となった言葉がそのまま出てきたことに、私を始め皆がはっとする。中でも、遠藤くんはやや興奮気味に声を上げた。

遠藤遼太朗
それだ、いっちゃん!部長の誕生日ん時!マネージャーがショートケーキプレゼントっつって、どこから食う?って話になった!
海白翔太
あー!ありましたね。その時も、いっちゃん同じこと言ってましたよ。で、先輩達から「だから諫美は」って言われて、バスケでのチームワークの話になって
諫美
あー・・・・・・あったな、そういえば

『先輩』に『そのままの発言』・・・・・・もしかして。

海白彩
まさか、それが答え?
神谷聖
みたいですね。諫美の顔に書いてある
里美
ちょっと!一体いつの話よ、それ
諫美
二ヶ月くらい前
里美
はー!?何でそんな前のこと夢に見るのよ!
諫美
知らないよ。見たくて見たわけじゃないし

わーわーと兄弟で漫才を始める中、私は有羽の質問が必然的であったことに驚きを隠せなかった。

海白彩
なんか、さすが有羽ね
神谷聖
あの質問の仕方ですか?
海白彩
そう
神谷聖
玖堂は答えを知っていたからできたんですよ。それまでにヒントも多くありましたし
海白彩
でも、私にはできないわ
神谷聖
先輩には先輩の良さがあるじゃないですか。そうやって人を褒めることができますし。玖堂は友達として付き合うのは楽ですけど、あそこまで頭が回ると・・・・・・対抗心が沸いてしまいます。僕の場合ですけど

聖くんは笑いながらそんなことを言ったけど、有羽を認めているのは確かだし、私を気遣って言ってくれたことに間違いなかった。

 

私は私でいいんだと、なんだか照れ臭くなりながらも、有羽が盛り上げてくれたイチゴを口に運んだ──

END

 

話し上手・聞き上手・使い分け上手

彩は聞き上手タイプです。

その人からどう質問すれば解決できるか?を考え、話を引き出します。

とにかく考えるのが好きです。

状況を見て、相手が話しやすい雰囲気作りをしたり、問いかけをしたりします。