そろそろ動き出してもいいな。
 三年という年月をかけて得た情報と、先日起きた向こうからのアクションに、智孝は静かな闘志を燃やしながら決意した。
 字守という一種の傭兵施設でもある幹部の人達からのめいもあり、その計画を実行するためのチーム編成を考え、今日、講義の後に集まってもらった。
 そのミーティングルームへ向かう前にどうしても話しておかなければならないことがあり、それを告げる相手を講義に呼んでいた。それが、晟と有羽だった。
 教室に自分たちの姿しかないことを確認した智孝は、二人に歩み寄り声をかける。

「お前達、目立ち過ぎだ」
「ですよねー」
「ですよね、じゃない」
「えへへ。ごめんなさい。でも、なかなかいい質問だったでしょ?」
「まあ、な。あれで帳消しにしておく」

 恐らく、遼太朗が鬼であるという真実を聞いたのだろう。晟は、講義の途中叫びに近い声を発し、皆の注目を一斉に浴びたのだった。
 そのフォローを『質問』という形で有羽がしたのだが、タイミング良くそこで終了のチャイムが鳴った。

「その様子だと、遼太朗の正体を知ったくらいか?」
「ってことは、智兄ともにいも知ってたの?」

 兄と呼び、そう問いかける晟を不思議に思った有羽は疑問符を頭の中でたくさん浮かべている様子だった。それに気付いた智孝は、軽く晟の紹介をする。

「ああ、晟は紘人ひろとさんの息子なんだよ」
「──え、は、ええっ!? 紘人さんて、あの紘人さん? 字守を作ったMARSマースの初代リーダー?」

 興奮する有羽とは裏腹に、晟はつまらなそうな表情を浮かべた。幼いころから「皆の憧れのヒーロー」である父の名を出すと、手のひらを返したような反応をされていたので仕方ないと言えば仕方なかった。しかし。

「へー、じゃあ、色々と大変だったでしょ? それだけ有名だと、どうしても比べられちゃうもんね」

 有羽は今までにない反応を示した。晟も目を丸くしてその心の内を表す。

「私はどっちかっていうと、これから晟がどう活躍するのかが楽しみだな」
「すげー……そんな反応見たことない」
「え? そう? だって晟は晟じゃない。紘人さんじゃないんだし。って同じこと言ってる?」
「いや、いいんじゃないか。嬉しそうだし」

 笑いながら答えると、晟はまたぎょっとした。今度は恥ずかしさがこみ上げてきたのだろう。晟の様子を見て、やはりチームに有羽を入れることは『正解』だったと確信する。
 予想もしない答えを返してくるのが有羽であり、突飛で不可解な行動もとるが、根本的な真理をこいつは掴んでいる。

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言葉で傷つくこともあれば、救われることもある。言葉の力を信じて、文字だけで伝える「小説」で人生をプラスに変えることを使命とするインディーズ小説家。※画像は恋愛ファンタジー小説【アザナカミ】のヒロイン、玖堂有羽です