ここ字守育成施設では、その能力と特技によってクラス分けされていた。
 情報収集を主に担う『華クラス』。武器の所持・使用が認められ、字守の補佐として実戦の場に向かう役目を担うのが『影クラス』。朧を扱い、それの回収や魄の浄化を行う字守たちは『雫クラス』に属した。
 朧の回収や魄の浄化で実戦が伴う字守(とその補佐)たちは、傭兵としての訓練もしていて、そのレベルをはかるために年に2回ほど昇格テストが行われていた。
 今日は、玖堂有羽と黄楊つげ諫美の『影クラス』へのテスト日である。

 先程任務内容を聞いた有羽達は、配属されたチームの集まる教室へと向かった。テスト生二人に対し、字守も同じ人数で評価する。「失礼します」と言いながらドアを開けた先にいる字守たちを見て鼓動が高鳴った。
 もしそうであればとんでもなく嬉しい、そんな期待を抱きながら。

「え?もしかして、先生と遼が私たちの担当なの?」
「そうだよ」
「うははーい!やったー!!」

 謎の喜びの声を出しバンザイをした。そんな有羽とは対照的に担任でもある智孝は呆れた息を吐いた。

「お前は……遊びに行くんじゃないんだぞ?」
「わかってるよー。でも一緒だと思わなかったから嬉しくて。ね、諫美くん」
「俺にふられても困る」
「もう、素直じゃないなぁ」

 諫美くんだって嬉しいくせに。普段、牙白ガラ──遼太朗を兄のように慕っている諫美を見てきた有羽は心の中で呟いた。
 すると、別のテスト生と対面を終えた野田実春が近づき、智孝に人数が揃ったことを告げた。
 任務の詳細を話すために教壇へと立つ字守達。有羽も諫美と一緒に近くの席へと腰を落とした。

「今回の任務の内容は先程も聞いたと思うが、木須沢きずさわにある工場の調査だ。ここで朧の使用と魄の反応が確認されている。朧はどうやら生物兵器の開発のために研究されているようだが、その詳細を調べてくることが目的だ。朧の回収や生物兵器の調査は、MARSが引き継ぐことになっている」

 MARSというのは字守の精鋭チームであり、育成施設になる基となった存在だ。そのリーダーである樫倉紘人が亡くなる前まで、智孝も所属していた組織だった。

「工場の敷地内に建物は3つ。研究施設と製造工場、居住施設だ。我々が向かうのは研究施設で、階ごとのチームに分かれて調査を進める。1階を上原うえはら率いる1班が、2階を結城ゆうき率いる2班が、最後、遠藤率いる3班は3階を調べていく」

 名前の挙がった字守たちは各々のチームの前に立つ。自分達は3班だ。

「建物の内部構造なんだが、実はよくわかっていない。地下があると予想されているが、その有無も定かではない。何か情報を得たら班同士、連絡を忘れずにな。一応、建物の外部構造を見せておく。野田」

 実春は了解の意を表すように頷いた後、3つの建物の外部構造のデータをそれぞれの机に設置されているモニターに映し出した。

「あとは各自、班長に報告の仕方などの確認をとるように。以上で説明は終わりにするが、全体的な質問はあるか?」

 誰も手を挙げなかったので智孝は説明を終え、一時間後の出発までに準備を整えておくようにと告げて壇上を降りた。
 こちらに向かってくる智孝と遼太朗に、有羽は逸る気持ちで疑問を投げかける。

「ねえねえ、生物兵器ってどういうの?細菌みたいなやつ?それとも、動物の変なの……ゾンビみたいなのとか?」
「ゾンビって。有羽、ゲームやりすぎ」

「諫美くんには負けないから」と小さくガッツポーズをとると、智孝がちょっと困った顔をして答えた。

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言葉で傷つくこともあれば、救われることもある。言葉の力を信じて、文字だけで伝える「小説」で人生をプラスに変えることを使命とするインディーズ小説家。※画像は恋愛ファンタジー小説【アザナカミ】のヒロイン、玖堂有羽です