ドクン、と一つ大きく心臓が跳ねた。
右手首に加わった強い力。
そして、あと数センチで触れてしまうほど縮まった互いの唇の距離。
射抜くような彼の視線にとらわれた私は、瞬きするのも忘れて彼の言葉を聞いた。

「先輩、俺の性別わかってる?」

そんな聞かなくても私がわかっている質問に、何故か急に恥ずかしくなり、私はその気持ちを表すように顔を赤らめた。
腰に回されている彼の腕から体温を感じる。

「わ、わかってるよ。そんなこと」
「そ。じゃあ男ってもんをわかってないってことだ」

その言葉に私はぐっと息を呑む。
こんな状況のままでこの後どうなるかってことは、いくら私でも予測できる。
でも、こんな状況になるなんて思いもしなかったのは事実だ。

「……チョコ、欲しくないの?」

視線を外し、私はどうでもいいことを口にする。
しかし彼はさっきよりもさらに近づき、耳元で囁いた。

「欲しいよ。先輩のことも全部」

そして、言い終わると同時に耳たぶへのキスが贈られた。
私はその瞬間、背筋が痺れるのがわかった。触れられた耳が熱い。

「っ、諫美(いさみ)くん」

戸惑いを表すと、彼は意外にもあっさりと私を放した。
一つ息を吐き、やれやれと言った様子で口を開く。

「だから言ったじゃん?わかってないって。チョコ渡したいだけなら、そう言えばいいんだよ。先輩、何したっけ?」
「もう少し一緒にいてって言いました」
「それだけ?」
「…諫美くんに抱きついてた…」

歯切れ悪く答える私に、諫美くんはくすっと笑う。
私の頬に触れ、覗き込むようにして「わかった?」と尋ねる彼に、こくりと頷く私。

1秒ほど見つめ合った先には、彼の優しいキスが待っていた。

「さっきのは忠告分、これは授業料ってことで」
「まだあるの?」
「チョコのお返しに期待しててよ」

いたずらっ子のような笑みを浮かべてそんなことを言われては、赤面は免れない。
少し前にあんなことがあったんだから。

それでもチョコを差し出してしまうのは、強引さの中で見せる───彼の愛。

END

第3話【イメージカラー】

Sakon’s side【強引】

強引|橘右近

 

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Novel

99.7

音楽と共に選択肢によって進めるストーリー展開となっています。「アザナカミ」の世界観や主要キャラクターを知ってもらえればと思います

 

字守(旧ver.)

❚あなたの生きる意味は、必ずあるよ。

彼は残す、その力を、勇気を、智恵を。
私はつなぐ──その命を。

人の負の感情にとりつき、その感情を増殖させる『はく
実体はなく、精神を破壊するその存在は魔と呼ぶにふさわしかった。
魄にとりつかれた者は、感情を表す言葉を食われていき次第にその身を滅ぼしていった。
対して、その魔を浄化させる力を『おぼろ』と呼び、石を媒体として朧を操る人を『字守あざながみ』と呼んだ。

字守によって救われる人々。
しかし、人あらざるものの力──朧を使うことの代償は、同じく感情であった。
字守と魄。
相対する二つの力が、今ぶつかる──

 

目次

■第1話 謎の招待状
SCENE1:ざわつく心 / SCENE2:アクシデント / SCENE3:恐怖の始まり / SCENE4:出会い / SCENE5:飛行機ごっこ / SCENE6:記憶、力の暴発

■第2話 魄と朧と鬼と人形リーズ
SCENE7:意外な真実 / SCENE8:準備 / SCENE9:興味 / SCENE10:必要なこと / SCENE11:リーズという存在 / SCENE12:賭け / SCENE13:秘密

■第3話 鬼が消えた日
SCENE14:出発前 / SCENE15:出迎えた者は? / SCENE16:かわいい天使 / SCENE17:未知なる体験 / SCENE18:流天vs字守 / SCENE19:鬼の血

 

短篇集

❚色んな感情を疑似体験しよう。

現代ファンタジー、恋愛、人間ドラマ、青春、シリアスなど、多岐にわたるジャンルの短編小説を掲載。

■先生!恋愛小説の書き方教えてください
小説を書いたことのない私でも書けた。自分を知るために。──浮気をテーマにした小説の書き方の小説。
1 / 2 / 3 / 4 / 5(完)

私は『悪』になる
悪というのは、常に笑っていて、常に自信満々だ。必要悪である彼もまた、自分の正義を楽しんでいた。

契りの果ては
籠女かごめの話

15個のカノジョ
僕たちは二人で一人の作家であり、クリエイターであり、エンターテイナーだ。僕らは時にぶつかり、時に融合し、最後に壊した

廃棄処分にして下さい。
私は欠陥品だった。だけど、私は幸せだった。

僕の初めては113秒。
「楽しくもなくつまらなくもなく生きて、意味あんの?」その一言が僕を変えた。ある日、男はそう僕に言った。そいつと出会ってから僕は、毎日の「初めて」を切り取るようになった。そして気付いてしまった。僕に生きる意味はあるのだろうかと──

R18作品目次
性描写、または暴力的なシーンがあるため、年齢制限をつけました。目次が認証画面となりますので、必ず確認をして下さい。本編を読むためにはパスワードが必要です。

君がいたから
失って初めて気付く、その存在の大切さと秘めた想い。人を愛するというのは、どういうことか?を描いた恋愛人間ドラマ。★とある出版社のコンクールに出品し、『準入選』を頂きました★

女という性、紅の血
高校が舞台の恋愛ストーリー。彼女のいる人を好きになった野中泉のなかいずみ。彼女の起こす行動に主人公の聡子さとこは血が騒ぐのを感じた。女性は何故『思い出』を作りたがるのか?その真相を描きました。

麗らかな恋の花
短編恋愛小説。ほのぼのとしています。人は自分に足りないものを補い合うために出会い、別れを繰り返す。その中で誰か、何かを愛する。

 

Len*Ren

❚甘いひとときに包まれたい

※長編小説【字守-アザナカミ-】のキャラクターのアナザーストーリーです
・・・15歳以上推奨作品
■・・・全年齢対象作品(新作順)

 

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