恋愛|短編小説

25センチ

 いつの間にか恒例となっていたお隣さん同士での花見。初めの頃はお弁当を作ってと、本格的なものであったが、次第に互いの都合がつかなくなり、夜の散歩がてらにという気軽なものへと変わっていった。そして、それに参加するメンバーに…

『願いの舟』

「智孝さん、次はあれに乗りませんか?」 船に乗りコインを泉に投げ入れるという恋人に人気の室内アトラクション、私はそれを指差した。 「スピーカーから聞こえてくる声に従ってコインを投げて下さいね」 乗物に乗り込んだ私達に、係…

待ち合わせ

ベンチに座ってぼんやりと冬の装いを纏(まと)っている人々の往来を見ていた。 待ち合わせ時刻を5分ほど過ぎている。 広場に立つ時計を見上げ辺りを見回す、という何度目かの行動をして私は携帯電話を取り出した。 別に彼にかけよう…

バレタインのプレゼント

2月14日。 この日は朝から皆そわそわしてて、好きな子の行動をお互いに気にしてる。綿飴みたいに甘くてふわふわとした空気に包まれている感じが何だかいい。 それに、女の子がすっごくかわいく見えるんだよね。好きな人のために一生…

ホットチョコのように。

「はい。どうぞ」  にこりと笑いながら有羽は言った。手にしているカップからは、ゆらゆらとホットチョコレートの湯気がたっている。  晟はお礼を述べてひと口飲む。  ほどよい甘さと、寒空の下にはありがたい温かさに自然と顔がほ…

不意打ち

8月。 夏休みという学生の特権を満喫──とまではいかないが、まあまあ楽しんでいる諫美(いさみ)は、何か飲み物をとってこようとキッチンへ向かった。 クーラーがきいている部屋にいても、窓の外から大音量のセミの声が聞こえてくれ…

愛しき人

 子供の頃から毎年もらっていたバレンタインのチョコレート。  お隣さんだからという、ただの義理チョコだった。  去年も、OBとして母校である高校の部室に顔を出した時、集まったメンバーたちと一緒に食べた。  テーブルの中央…

君がいたから

1:帰宅  6月28日。  その日は梅雨時にもかかわらず嫌味なほど晴れていた。  火葬場から天へと昇る煙を見つめ、私は一時間程前に別れを告げた人を思い出した。  本橋真己(もとはし まさき)  私の幼馴染みで、家族のよう…

女という性、紅の血

キーンコーンカーンコーン…… 4時間目の授業が終わり、生徒達は各々行動を開始する。私は今の授業のノートをとるのに時間がかかり、未だ机に向かったままだが、後ろの席にいる野中泉(のなか いずみ)さんは例外ではなく、友達二人と…

麗らかな恋の花

春。 桜が咲き始めた頃、私は学校を卒業した。 卒業式も無事に終わり、学校生活最後を名残惜しむようにして、卒業生達は校舎やら校庭やらに集まっていた。 先生方に挨拶を済ませた私は、特に用はないと生徒達の間をくぐり抜け門を出る…