恋愛|短編小説

ヒナ・マツリ

「ねえ、彩先輩。先輩の家はお雛様とか出すの?」  海白彩は樫倉晟の誘いを受けて、彼の部屋へ遊びに来ていた。  クッションの上に座っている彼女の隣りに腰を下ろした晟はそう質問すると、彩は微笑んで「もちろん」と答えた。 「じ…

ウタニ ササゲル-Sakon’s side-

 終業式も間近に迫った12月中旬。  部活で使用する雑多な資料を抱えた海白彩は、いつものように裏庭を近道として横切ろうとした時だった。  聞き覚えのある男性達の声が聞こえてきて、思わず足を止める。  木の陰からそっと覗く…

紅く染まる空を見上げながら

「でも彩ちゃんが手伝ってくれるとは思わなかったよ。何でも言ってみるもんだね」  玖堂有羽(くどう ゆば)は会議室の扉を開けながらそう言った。 「提出するものも何とか終わったしね。それにココって入ったことなかったから」  …

紫陽花(あじさい)

 長雨の続くこの季節になると思い出すことがある。  今年卒業してしまった先輩との会話。  本当に小さなことで、多分先輩も覚えていないだろう。それくらい、些細な内容だった。でも僕には忘れられない、大切な想い出だ。  あれは…

Sweet Christmas【彩と実春編】

 晟(せい)とのツーショットをまざまざと見せ付けられてからも、いつもと変わりなく接していた実春(みはる)だったが、パーティでの彩(あや)の様子にある心配の種を撒いていた。  それは終了時には大きく花を咲かせ、いても立って…

Sweet Christmas【彩と聖編】

「じゃあね、彩ちゃん。また今度……年明けかな?」 「そうね。初詣、一緒に行けたら行きましょ」  仲良しメンバーで過ごしたクリスマスパーティも終わり、晟や有羽と四人揃って帰宅していた聖たちだったが、自宅へ向かう分岐路にさし…

Sweet Christmas【有羽と晟編】

 素敵な仲間達と迎えたクリスマス。こうして一緒に集まってパーティをするのは初めてのことだったが、昔からのイベントのように違和感なく懐かしい気分で一時を過ごした。  帰宅の時刻となり一通りの片づけを終えると、晟(せい)は有…

Sweet Christmas【prologue】

 12月25日。  今日は前々から皆で約束をしていた日だ。今の仲良しメンバーで盛大なパーティをしようと。今年になってようやくそれが叶うということだ。  仲間のの叔父が経営している飲食店を貸切にして、皆で準備をし、思い出に…

はちみつの時間―寝起きの本音―

「ねえ、遼(りょう)。ひざまくらしてあげる。こっちきて」  自室のベッドの上に座り、有羽(ゆば)はそう言って手招きをした。  年頃の男子としてはおいしいのか困ってしまうのか微妙なシチュエーションだが、せっかくの有羽の誘い…

彼と私と天の川

「はあ……何やってんだろ私」  深いため息をつき、すっかり暗くなった空を映し出している川を見つめながら、有羽(ゆば)はそう呟いた。その視線はどこを定めるわけでもなく、ただ川の奥を向いていた。  今日は久しぶりの下校デート…