LAST SCENE|僕の初めては113秒。
また電車がせわしなく人を吐き出し、飲み込んだ。反対に僕はゆっくりと鉄格子をつかみながら膝を落とした。肝心の「では、どうすればいいか?」がわからず、頭に大きなおもりがあるみたいだった。重くのしかかり、苦しい。ドサリと鞄が肩から落ち、紙が小...
また電車がせわしなく人を吐き出し、飲み込んだ。反対に僕はゆっくりと鉄格子をつかみながら膝を落とした。肝心の「では、どうすればいいか?」がわからず、頭に大きなおもりがあるみたいだった。重くのしかかり、苦しい。ドサリと鞄が肩から落ち、紙が小...
それから僕は生きることも死ぬこともできなくなった。生きることも死ぬことも怖くなった。あの男のように飛び降りたとしても、今の僕ではこう言われるだけの価値しかない。「どこか違う所でやれよ」一時いっときは話題になるかもしれない。同じ学校の奴ら...
それは強い衝撃だった。外部から物理的にというよりは、内部がめまぐるしい速さで動いているようだった。頭に心臓があるのではないかと思うほどの鼓動が激しく高鳴る。緊張で汗をかく。手は微かに震えていた。人が、死んだ。見てしまった。その黒い塊が人...
その後男がどうなったのかはわからない。もちろん、ニュースにも載ってない。次の日にもう一度訪れたが、何の変哲もなかった。警察が『立ち入り禁止』の境界線を貼ることもなければ、以前と変わらぬ静けさを保っていた。もしや、あれは夢だったのではない...
「またしようね」と、赤い唇が動いた。そして制限時間ギリギリとなった彼女は、そそくさと部屋を出る。その後姿を見て僕は思った。残念だけど、それはない。僕の初めては終わってしまったから。 僕の初めては113秒。 ある日の夕方、家へ帰ろうと...
1:帰宅6月28日。その日は梅雨時にもかかわらず嫌味なほど晴れていた。火葬場から天へと昇る煙を見つめ、私は一時間程前に別れを告げた人を思い出した。本橋真己(もとはし まさき)私の幼馴染みで、家族のような存在でもあった彼は、一言で言えば面...
キーンコーンカーンコーン……4時間目の授業が終わり、生徒達は各々行動を開始する。私は今の授業のノートをとるのに時間がかかり、未だ机に向かったままだが、後ろの席にいる野中泉(のなか いずみ)さんは例外ではなく、友達二人と話をしながら昼食を机の...