30階──つまり、ここの最上階に降り立った晟は、クロスワードの答えでもある目的地「ヘリポート」へ向かっていた。
 屋上でもあるこの場所は、一般客でもくつろげるようにとガラス張りになっている他、温水プールもあり観葉植物で囲まれたオアシスのようだった。エレベーターで容易に辿り着くことはできたが、どう見てもヘリポートとしては使えない。
「マップ」を開いてみると、光の強い現在地の左側にうっすらと『H』の文字がある。どうやら隣が目的地のようだ。こことつながる扉とヘリポート専用のエレベーターの表示もあった。

 パネル操作とカードキー、か。
 堅く閉ざされている扉の右横に数字を打ち込む電子パネルとカードを通すスロットがあった。
 左胸のポケットから出ている鎖を引っ張る。すると、何の抵抗もなくお目当てのカードキーが姿を表した。

 ま、どうせ通らないだろうけど。そう思いながらカードを通すと、「ビー、ビー」という2回の警告音と共に「Errorエラー」の文字がパネルに表示された。
 カード自体もダメってことかな。カードの裏や表をクルクルと変えながらそんなことを考えていた時だった。

「そんなに簡単には脱出できませんよ」

と、またも背後から突然声がかけられ、晟は一瞬肩を跳ね上がらせた。声にこそ出さなかったが、かなり驚いた。さっきと同じく、気配を全く感じとれなかったからだ。

「九条……さん、びっくりした」

 ホント、何なんだろうこの人は。最初に出会った時とは衣装を変えての登場と、意味深な発言に眉をひそめる。

「先程、忘れ物として保管するように言ったはずですが?」

 まるで晟の問いかけには答えないつもりなのか、そんな質問を返す。

「すみません。これがヒントかな、と思って。──でも、九条さんの言うことがヒントだったんですね」

 ちょっとカマをかけてみた。『脱出』という言葉を使っているならば、この舞台がゲームであることを知っているはずだからだ。
 九条は相変わらず無表情のままだったが、少しだけ返答に時間を要していた。

「私は支配人の指示通りに動くロボットに過ぎません。ヒントとして捉えるかどうかはあなたの判断次第です」
「ってことは、ヒントにしてもいいと」

 言いながら腕の「服」ボタンをタップする。

「ちょっと、すみません」

 了承を得るつもりもなく、晟は九条の服をスキャンし始めた。ピピピピピと独特の電子音と共に九条の体を計測し終えたセンサーは、晟の衣装としてそれを追加する。ちゃんと男物になってるんだな、と変な所に感心した。そして自分たちの他に人がいないことをいいことに、晟は新たに加わった衣装に着替える。
「フロアマネージャー」と肩書が変わっているところを見て、もう一度スロットにカードを通してみた。
 今度はErrorにならなかったが、数字のパスコードがわからなかった。

「まあ、ですよね」

 簡単にはできないと言われた手前、苦笑いを浮かべると初めて九条の表情が緩んだ。

「でも、間違ってはいないですよ。まさかここでスキャンされるとは思っていませんでした」

 他のプレイヤーでは見られなかったことです、と付け加えられ、晟は誉め言葉として受け取ると同時に『他のプレイヤー』の存在を思い出した。
 それって、有羽ゆばたちのことだよな? それとも……ダメもとで尋ねようと口を開く──その時だった。

 低く唸るような音と共に、建物が揺れた。地震ではない。でも、何かが起きた。

「フロア21で爆発事故が発生。お客様の安全を確保し、避難誘導に向かってください」

 精一杯平静さを保つような女性の声が耳元に届いた。

 

>>>次回へ続く

 




Protect Characters―アザナカミ―|season1|目次

■第1話 謎の招待状
SCENE1:ざわつく心 / SCENE2:アクシデント / SCENE3:恐怖の始まり / SCENE4:出会い / SCENE5:飛行機ごっこ / SCENE6:記憶、力の暴発

■第2話 魄と朧と鬼と人形リーズ
SCENE7:意外な真実 / SCENE8:準備 / SCENE9:興味 / SCENE10:リーズという存在 / SCENE11:賭け / SCENE12:秘密

■第3話 鬼が消えた日
SCENE13:出発前 / SCENE14:出迎えた者は? / SCENE15:かわいい天使 / SCENE16:未知なる体験 / SCENE17:流天vs字守 / SCENE18:鬼の血



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ABOUTこの記事をかいた人

役者経験を活かし、自分を見つめることで人生を豊かにさせる方法を伝えるヒューマンディレクター。 「生きる」と「愛」をテーマにした小説を書くインディーズ作家でもある。 webデザインで色んな人のビジネスに関わり、自分の世界観を広げ、子供たちが楽しくビジネスを学ぶ学校を作るのが夢。