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ばなやん(一ツ屋有美子)にファンレターを贈る

SCENE4|僕の初めては113秒。

2019 12/26

それから僕は生きることも死ぬこともできなくなった。生きることも死ぬことも怖くなった。
あの男のように飛び降りたとしても、今の僕ではこう言われるだけの価値しかない。

「どこか違う所でやれよ」

一時いっときは話題になるかもしれない。同じ学校の奴らも少しは考えるかもしれない。だけど、それだけだ。一瞬で終わる。また日常に戻る。
親でさえ悲しむかどうかわからない。
事故があった日、偶然にも次の電車に乗っていた父親は言った。「いい迷惑だ」と。

それは、こういう意味か? 死ぬなら誰にも迷惑をかけずに死ね。
それとも、こういう意味か? 自分とは無関係の場所と時間を選んで死ね。

どちらにしても、その人は死ぬ。
どちらにしても、自分はいつものように仕事ができれば問題ないということだ。

ふざけてる。仕事がそんなもんだと僕に教えるな。学生時代を楽しんでおけなんて言うな。じゃあ何か? 学生を過ぎれば楽しくないのか? ただ淡々と作業をこなし、楽しくないことだとわかっていながらそこに時間を費やし、終えるだけの人生を僕に歩めってことなのか。自分と同じように?

業績が上がらないのか、最近の父親は特に不機嫌だった。夜は酒の匂いがリビングに充満していた。
なぜ頑張っている父親の努力が報われないのか? 不思議に思っていたこともあったが、今ならわかる。
人の死を何とも思わない奴に、人を感動させることなんてできない。

何も感じず、何も考えず、自分の意見を押し殺したまま、人の指示と評価を糧に生きる。
生きる? 本当に? これが生きるってことなのか?

ヒューーーンと風を切る音と一緒になって、足の下を快速列車が駆け抜けていった。
学校をさぼり、この陸橋から雑踏を見つめるのが僕の日常になった。授業を受ける気はしなかった。
もちろん、社会に出るためには『それなりの教養』が必要だ。
だけど、その教養を受けてきた人間が、すぐ側で人が死んでも笑っていた。自分の都合を考えていた。
自分もそうなるのではないかと思うと、僕は希望も気力も失っていた。

 

一ツ屋有美子@声優小説家
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